物語 第八回

野猪林にて


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 刀を持ち、過って白虎節堂に侵入し捕らえられた林冲。林冲は家に二人の使者がやって来て、刀くらべをしたいと言うので刀を持参し、しばらく待っていたが、二人は中に入ったまま出てこないので過って節堂に入ってしまったのだと、慌てて事のいきさつを告げたが聞き入れるはずはない。これはすべて、高俅が息子の事を思って巧妙に仕組んだ罠であった。
 節堂をうかがい、暗殺を企てたとして、林冲を捕りおさえると、処刑にせよと開封府へと送られ、死刑牢に入れられた。林冲は高俅に陥れられたのだと無罪を訴え続け、判決を待った。

 開封府の知府は頭を悩ませたが、正義感の強い孔目の孫定は、決して高俅の言うままに死刑にしてはならぬと進言した。
 知府も暗殺事件が高家のでっちあげだと感づいていたが、刀を持って節堂に入った事は確かであるため、林冲を無罪とする事はできない。孫定は林冲が日頃から人望あつく慕われている事を知り、また舅の張教頭からの賄賂も効いていたので、とりあえず流刑にしておけば林冲が命を失う事はなく、高俅の顔を潰す事もないとして、遠地へ流刑としておけばいいと言うと、知府も納得し、林冲には入れ墨し二十の棒打ちを行いの滄州流刑の判決がでた。

 高俅に睨まれた林冲にとっては不運としか言いようがない。潔く刑に服す決心をし、滄州への出発する事となる。出発の際、舅に妻宛への離縁状を書いて渡し、今後どこか良縁があったら嫁がせてくれと告げ、涙を流して後から駆けつけた妻を振払うようにして別れた。
 多くの人々に見送られ、滄州へ林冲は出発した。林冲護送の指令を受けたのは董超と薛覇二人の端公である。開封出発を前にして二人はある酒屋に呼び出され、陸謙と密談をしていた。
 董超と薛覇は陸謙から金を渡され、高俅の命令だと告げ、密かに滄州護送中に殺害するように命じた。
 董超と薛覇は高俅の命令だと言われれば従わない訳にはいかず、金を受け取ると、証拠として林冲の金印を剥ぎ取る事とし、近ければ二つほどの宿場で暗殺する事を約束し別れた。
 そして滄州へと出発した、端公が陸謙から暗殺を命じられている事など知らない林冲。猛暑の中、重い首枷をはめ、ひたすら滄州へ歩く林冲は棒打ちを受けた時の傷が痛みだし、なかなか足がはかどらない。
 だが、それでも八十万教頭と知っては返り打ちにあう危険があり、下手に手がだせず林冲の縄尻を握り、水火棍で後ろからつつきながら、じっと機会をうかがっている二人であった。

 数日して宿場についた三人。董超と薛覇は湯を用意すると、足を流せと首枷で不自由な林冲に巧みに近寄り、親切そうにして熱湯の中に足を押し込んだ。熱湯と知らずに身を任せた林冲はひどい火傷を負い、その激痛に食事も睡眠もとれずにいた。
 翌朝、履き慣れた草蛙は棄てられていた。足は夕べの火傷で少し歩くと血まみれになった。しばらく行くと、大木が生い茂る薄暗い林についた。今まで何人もの好漢が護送中に闇へと葬られた野猪林である。そうとは知らない林冲は端公の二人が、しばらく休憩するから木に縛り付けておくぞと言うと、足の痛む林冲は薛覇の言うままに縄で木に縛りつけらせた。
 すると身動きのとれない林冲に、いきなり水火棍を突きつける薛覇。陸謙から暗殺を依頼された事を語り、高俅を恨めと水火棍を振り上げた。


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