物語 第七十四回

燕青対任原


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 ある日、梁山泊近くを通りかかった泰安州へ向かう旅商人から、毎年泰山の廟で開かれる相撲の大会に今年も二年連続で勝ちをおさめ、敵無しと豪語している大原府の大男、任原の噂を聞いた。
 相撲を得意とする燕青は、この話しを聞き、ぜひ相撲勝負したいと宋江に下山の許しを願い出た。心配した宋江だが、燕青の相撲の腕を知っている盧俊義も行かせてやってほしいと言うと、宋江は許可した。
 翌日、商人に変装した燕青は、皆に見送られ下山し泰安州を目指した。しばらくすると、無断で下山してきた李逵がおいかけてきて、燕青に無理矢理ついて行く事になった。

 数日して泰安州に着いた燕青と李逵だが、旅の途中で耳にするのは任原の噂話ばかり。ふたりは宿を取り、廟へ下見に行くと、多くの人々が任原の掲げた額を見上げていた。額には北南に敵無しと書かれている。燕青は挨拶がわりに、その額を叩き壊した。
 この事はすぐ大騒ぎとなり、任原の耳にも入った。怒った任原の弟子達が宿へと押しかけてきたが、燕青は知らぬふり、李逵は仮病をつかって宿でおとなしく過ごし、大会の日を待った。

 当日、廟は大勢の見物客でいっぱいになり、李逵も客の中に紛れこんだ。多くの弟子に囲まれた任原、すでに準備は整っていた。任原が舞台へと上がり対戦者を募ると、観客の中から燕青が飛び出した。
 二人の体格差をみた立会人、無謀とも思える行為に一度は止めたが、燕青のやる気は変るはずがない。上着を脱ぎ捨てると、背中の見事な刺青を現して任原を威圧した。最初は馬鹿にして笑っていた観客達も燕青の真剣さを受けて皆騒然となった。
 州の太守は、ただならぬ燕青の姿を見て、この勝負を引き分けにし賞品を分けるから側で働くようにと、話しを持ちかけたが、燕青はきっぱり断った。

 立会人の開始の合図とともに、燕青は状態を低くかまえて任原を睨みつけ、襲い掛かってくる任原の脇の下をひらりひらりとかいくぐり、任原の片足をつかむと、頭を押し上げて大男をよろけさせた。足をつかんだまま二度三度任原の体を回して、そのまま場外へと投げ落とした。
 観客からは拍手喝采だったが、任原の弟子達が暴れだしたため、怒った李逵が飛び出し、棒をつかむと任原の弟子達を打ちのめした。中には李逵を知ってる者もいて、会場は大混乱となった。
 任原は場外に叩きつけられて気を失っていたところ、李逵に殺された。

 騒ぎを聞きつけた役人達だが、万一に備え、待機していた盧俊義は魯智深・武松・史進・穆弘・解兄弟と千人ほどの手下を従えて応援に来ていたので、李逵と燕青は盧俊義達に合流し、逃げ出す事ができた。ただ途中、李逵だけがいなくなったのに気付き、穆弘に探すように命じて、他の皆は山寨へと戻った。
 李逵は大暴れした後、ひとり別行動をとり、泰安州を出て寿張県へと立ちよった。そこでは役所へ入りこみ、知県の衣装を剥ぎ取ると、役人達に無理矢理裁判をさせて楽しみ、寺子屋で先生や子供を脅かして喜んだ。ちょうど李逵の後を追っていた穆弘と出会ったので、二人はまっすぐ梁山泊へと戻った。
 梁山泊では燕青の宴が開かれていた。知県の衣装を身につけた李逵の姿を見て皆笑い、無断で下山した罪も、今回は叱られただけですんだ。


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