物語 第五十二回

激戦高唐州


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 柴進は、怒った朱仝が李逵に襲いかかろうとするのを制し、二人の間に入って、ひとまず李逵を屋敷にて預かるので、朱仝には梁山泊に行ってもらう様に話しをすすめた。これに朱仝も納得して、呉用と雷横は朱仝をつれて梁山泊に帰る事となった。呉用は李逵に問題を起こさないようにくぎをさして、いずれ迎えに来るとして梁山泊に戻った。
 山寨では朱仝の仲間入りの連絡を受け、朱仝の家族を梁山泊に呼び寄せ住居を準備し、朱仝の仲間入りのための宴が用意された。

 朱仝が滄州を去った日、知事は戻ってこない朱仝と小衙内を探したが、見つかったのは小衙内の死体だけ。知事は大切な末子を殺されたと知って、すぐに消えた朱仝に逮捕命令を出した。
 一方、李逵が柴進の屋敷に残ってひと月ほどがたったある日、柴進のところに高唐州にすむ叔父の柴皇城から急ぎの手紙が届いた。手紙を読んで驚いた柴進は、数人の下男が慌てて高唐州へ出発の準備を整え始めた。
 屋敷で退屈していた李逵、ぜひにと柴進のともをしたいと言うので、柴進は李逵も高唐州に連れて行く事にした。

 高唐州の知事は高俅の従兄弟にあたる高廉が就いている。高廉の嫁には殷天錫というひとりの弟がいて、義兄の地位をかさにかけ、いつも数十人ほどのならず者をを引き連れて、街を我が者顔で歩いていた。
 ある日、殷天錫が立派な柴皇城の屋敷や庭園に目をつけ、ならず者達をひきつれて、屋敷を引き渡せと難くせをつけて来た。理不尽な振るまいに怒った柴皇城だが、相手はならず者の集団で道理がきくわけがなく、大勢に殴られた柴皇城は大怪我を負わされ、病床についてしまった。

 高唐州に着いた柴進は、すぐに柴皇城の病床をたずねたが、すでに食事もとれず息が細くなっていた。柴進は叔母をなぐさめ、後の事を引き受けた。柴皇城は柴進が来た事を知り、仇をとってくれと最期の言葉を残して死んでしまった。
 李逵は話しを聞くと大いに怒って、殷天錫をこらしめてやると出て行こうとするのを柴進はひきとめ、滄州に置いてきた丹書鉄券を取り寄せるようにして、皇帝の前に出て公正に裁いてもらうのだと言う。李逵はそんな事をしても無駄だと言ったが、柴進の考えは変わらなかった。

 柴皇城の葬式を終え、喪に服していると殷天錫が再び数十人のならず者を連れてやって来た。対応に出てきた柴進は、先朝より丹書鉄券を賜る由緒正しき家柄に理由もなく踏み込む無礼を殷天錫に詫びさせようとしたが、そばでこっそり話しを聞いていた李逵が飛び出して来た。
 柴進が止めるのも聞かず、李逵は数発で殷天錫をなぐり殺してしまい、ならず者達にも怪我を負わせて追い返した。驚いた柴進は李逵を屋敷内に入れ、丹書鉄券があるから心配するなと言って、捕手が来る前に梁山泊に帰らせる様にした。

 義弟が殴り殺されたと知らせをうけた高廉は役人を柴皇城の屋敷に向かわせた。まず出て来た柴進を縛り、殷天錫をなぐり殺した黒い大男を探したが見当たらないので、柴皇城の家族達を有無を言わせず縛りあげて役所へとつれさった。
 最初から裁判にする気などない高廉は、柴進に手酷く拷問を与え、下男に殷天錫を殺す様命じたのだと強引に自白させる様に命じた。柴進は殷天錫と話し合をしたが、聞き入れられず誤って下男が殴り殺したのだと言ったが、執拗な拷問に絶えきれず、下男に命令して殷天錫を殺させたという自白するしかなかった。

 数日して李逵が梁山泊に戻ると、まっさきに朱仝が出て来て襲い掛かっていった。慌てて晁蓋、宋江達が止めにはいると、李逵は仕方なく朱仝に詫びて仲直りをした。
 李逵は高唐州で起きた事を話し、自分のせいで柴進が災難にあっている事を告げると、まず戴宗を高唐州に向かわせて情報を探りに出させた。
 数日して戻ってきた戴宗から、柴進は死刑囚の牢獄に入れられている事を知ると、救出する為に五千の手下とともに林冲・秦明・花栄・李俊・孫立・欧鵬・呂方・郭盛・楊林・鄧飛・馬麟・白勝を先陣として出発させ、宋江自らは呉用を軍師として三千の手下と朱仝・戴宗・李逵・雷横・張兄弟・楊雄・石秀を従え高唐州へ出陣した。

 梁山泊が攻めて来たとの知らせを受けた高廉は、兵士に号令し装備を整え迎え撃った。両軍が対峙すると、まず梁山泊軍から豹子頭林冲が丈八の蛇矛を振り回し飛び出した。高廉が賊をひっとらえてくれようとあざ笑い、配下にひと声かけると、統制官の于直が刀を抜き飛び出した。
 両軍の見守る中、林冲と于直との一騎討ちが繰り広げられたが数合渡り合った結果、于直は林冲の蛇矛を受けきれず討たれた。
 怒った高廉、再び部下に命令を出すと、飛び出してきたのは長鎗の使い手、統制官をつとめる温文宝であった。対する梁山泊軍からは狼牙棒の使い手、霹靂火秦明が我慢できず飛び出し林冲に代わった。両者わずかに武器を交えただけ、秦明の一振りで温文宝の頭はくだけ散った。

 二人の統制官が討たれた事で、さらに怒った高廉は背の宝剣を抜き、呪文を唱えた。すると辺りは急に薄暗くなり、妖しい風が梁山泊軍に向いて吹き出した。
 砂煙りが上がり視界を遮られた梁山泊軍は、敵味方の区別もできず戦どころではなく、ただ慌てふためくのみ。敵の乱れを見て、高廉は指揮下の飛天神兵三百人に号令をかけ突撃させると、梁山泊軍は多くの死者をだし退却した。
 しばらくして宋江の本陣と合流し、この妖術に対抗すべく策を練った。

 宋江は天書を開いてみると、風を返す術が記されていた。喜んだ宋江はその呪文を覚えると、隊を整え再び高唐州攻めを行った。
 高廉は梁山泊軍が攻めて来たと聞き、またも宝剣をかかげ呪文を唱えると、前と同じく辺りは薄暗くなり妖風が吹いた。梁山泊軍は慌てはじめたが、宋江が馬上で剣をかかげて呪文を唱えると、妖風は高廉の方へと吹き返された。宋江は妖術破れたり、と安心し前進を指示した。
 高廉は妖術が返されたと知ってすぐに別の呪文を唱えた。すると、猛獣毒虫のたぐいが梁山泊軍に襲い掛かり、戦わずして総くずれとなった。高廉は神兵に突撃を命令すると、梁山泊軍はまたも多くの死者をだした。

 退いて陣どった梁山泊軍、呉用は高廉が夜襲にくる事を予想し、陣を空にし左右に楊林と白勝の部隊だけを伏せさせて退き、夜襲に備えた。呉用の予想したとおり、高廉は妖術で雷雨を起こし、神兵を指揮して陣を襲ったが、人気が無いため計られたと気付き、急いで退却しようとした。左右に伏せていた楊林と白勝の部隊が矢を射かけると、高廉は数十人の神兵を失い退却、楊林の射た矢で肩を負傷した。
 高廉の雨風猛獣を呼びよせる妖術は恐るべしと改めて知った呉用は、とうてい公孫勝の力を借りなければ、高廉を倒す事はできないだろうと言った。


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