物語 第五十一回

雷横と朱仝


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 梁山泊では酒宴の真最中、朱貴の情報網が梁山泊近くを雷横が通りかかった事を捉えた。すぐに雷横を山寨に招き、晁蓋の元へ知らせを走らせた。
 雷横が来たと知らせを受けると、以前恩を受けた晁蓋、宋江らは金沙灘まで出迎えた。久々の対面を喜び安心すると、梁山泊や朱仝の最近の様子を尋ねあった。雷横は東晶府へ行く任務を終え、鄆城県に戻る途中だった。宴の席で晁蓋と宋江は、ぜひとも雷横に仲間になってもらうように説得したが、雷横は家にいる老母の面倒をみなければならないので、いずれ独りになったら仲間に入れてもらうと言い、翌朝一同に見送られ去って行った。新しく仲間入りした好漢達にはそれぞれ職務が与えられ、家族には住居が割り当てられた。

 雷横は役所報告を終えると、またいつもの職務につく。ある日、知り合いの李小二から最近東京から女芸人がやってきたと聞き、一緒に見に行こうと誘われると言われるままに芝居を見に行った。
 雷横は李小二は上席に座ると、舞台の上では女芸人の白秀英が東京じこみの芸を披露し始めた。客は拍手喝采して芝居を眺めた。李小二は雷横をほっといて、ひとり酒を飲みに出て行った。
 白秀英の持ち芸がやまを迎えようとするところで、父親である白玉喬が舞台のわきで口上を並べたて、白秀英に盆を持たせて客席へ向かわせた。白玉喬は娘の芸に金をはずんてもらろうと、まっ先に上席にすわっている雷横の元へ行かせ、声高らかに金を催促した。

 雷横は景気よくはずんでやろうと思ったが、あいにく金を持って来ていなかったため、次回見に来たときに奮発するからと言ったのだが、白玉喬はそんな言葉は信じず、雷横に向かって、金を出し惜しみするのだと罵った。客の中には雷横を知っている者がいたので、白玉喬に注意したが、さらに大声を出し、とことん罵声をあびせかけたので、ついには雷横も我慢しきれず、怒って舞台に飛び出すと白玉喬の顔面を殴りつけた。
 白玉喬は抵抗もできずに、舞台の上でひっくり返り血が流れ前歯が折れた。回りの者は慌てて雷横をなだめさせ、白玉喬の手当てをした。白秀英は驚いて芝居どころではない。客は騒然として皆外に出て行ってしまった。

 この白秀英は以前ここの知事といい仲だったらしく、東京から遥々呼び寄せていた為、ひとこと知事に訴えでると、芝居をめちゃくちゃにし、白玉喬に怪我を負わせたとして、すぐに雷横を捕らえさせた。知事は白玉喬、白秀英父娘の言うままに雷横に首枷をつけさせ、縄をかけて芝居小屋の入り口にさらし者とさせた。
 見張りを命じられた小役人は雷横に気をつかって縄だけはかけないでいた。それを見た白秀英は腹を立てて、知事に言い付けると脅かすと、小役人はしぶしぶ縄をかけた。
 だが、差し入れにやってきた雷横の母親が縄をといた。それを見て白秀英は怒って出てくると、母親に向かって罵るが、雷横の母親も負けてはいない。知事といい仲である事はすでに知っていて、牝犬めと白秀英を罵った。

 さらに怒った白秀英は、雷横の母親をひっぱたき、よろけたとろこをさらに打ち続けた。母親を痛めつけられ黙っいられるれ雷横ではない。首枷を軽くひねり外すと、白秀英の頭をひと打ちして殺してしまった。そのまま雷横は役所に連れて行かれ、死刑囚の牢獄へいれられた。
 牢の管理を任されていたのは節級に昇進していた朱仝、親友を助けてやりたいものの、殺人を犯したのではどうする事もできず、ただ牢内で辛い思いをさせないように面倒をる事しかできなかった。
 雷横の母親から息子を助けてほしいと金が届いた。朱仝は自分の金も使って、なんとか雷横の刑を軽くしてやろうと働きかけたが、白玉喬は雷横を死刑にしないと気が済まないと訴え、知事は愛する女を殺されたので朱仝の働きかけも効かなかった。

 朱仝の護送で雷横は済州府に護送される事となった。朱仝は雷横が死刑になると判かっていたので、護送の途中、他の役人の目をそらせ雷横を人気のない所につれ出すと、梁山泊に逃げこむようにと首枷と縄を解いた。
 雷横は罪人を逃がした罪を背負う事になると、朱仝の身を案じたが、朱仝は金もあるし、まして死罪にはならないだろうと言い安心させると、雷横は礼を言って急いで家にもどり母親をつれて梁山泊を目指した。
 朱仝は役人達に向かって、つい目を離した隙に逃げられたしまったと言い訳をして、辺りをゆっくり探させ見つからないなと呟きながら鄆城県へと引き返した。

 ウン城県に戻った朱仝は知事に雷横を護送途中で取り逃がした事を報告した。朱仝は知事に気に入られていたものの、白玉喬は朱仝がわざと逃がしたのだと騒ぎたてたため、朱仝を罪ももみ消す事はできず、済州府へと護送させた。そして済州府で朱仝の刑罰は滄州牢城送り決まった。
 朱仝は何事もなく無事滄州牢城に送られ、まず知事の前につれ出された。知事は朱仝が親友の為に罪を犯したのだろう思い、その風貌を気に入ると、牢には入れられず自分の側に使えさせる様にした。苦役を免れ数年辛抱すれば元の生活にもどれると朱仝も喜んで精一杯知事に仕えた。
 この知事には四歳になる男の子がいた。ある日朱仝の見事な髭を見てひと目でなついてしまい、側から離れなくなった。これより朱仝は知事の末子、小衙内の子守役となった。

 その日から朱仝は小衙内の子守り役として、外に連れ出しては何かを買ってあたえ面倒を見ていた。それから数日がたち、ある祭りの夜、朱仝は小衙内をつれて灯篭流しを見物に行った。石橋の上から流れて行く灯篭を見ていると、後ろから声をかけてくる者があった。朱仝が振り返ると、それは雷横だった。
 雷横は話しがあると言い、朱仝を人気のないところに誘った。朱仝は小衙内に石橋の上でじっとしてるようにいいつけると、雷横について行った。そこには呉用がいて、ぜひ梁山泊の仲間に引き入れたいと、晁蓋、宋江の言葉を朱仝に伝えた。雷横も仲間入りさせようと説得したが、朱仝は辛い事もなく知事に気に入られているし、数年すれば戻れるのでと固く断った。

 朱仝の強い意志を知り、呉用と雷横はあきらめて別れた。朱仝は二人と別れて石橋のところに戻ったが、小衙内の姿がない。辺りを探しているところに呉用と雷横がやってきて、もうひとりの仲間の李逵が連れ去ったのだと言うと、朱仝はびっくりして小衙内と李逵を探した。
 木陰に大男の姿をみつけた朱仝は小衙内はどこだと尋ねたら、李逵は、子供が泣き出したので軽く頭を叩いたと言う。近寄ってみると、そこにはすでに李逵の手によって小衙内は頭を割られ死んでいる小衙内の姿があった。怒った朱仝は李逵に襲いかかろうとすると、李逵は逃げ出した。捕らえてやろうとする朱仝を軽くあしらうように山道を逃げて行き、ある大きな屋敷へと誘い込んだ。

 そこは小旋風柴進のいくつかある別荘のひとつ、李逵は屋敷内に逃げ込んだ。朱仝は屋敷を訪れると、あらかじめ呉用から話しを聞いていた柴進が出て来て朱仝と対面し、互いに挨拶を交わすと、屋敷に戻ってきた呉用と雷横を呼び出した。
 呉用は仲間が誤って小衙内を殺してしまった事を深く詫び、再び梁山泊に仲間入りする様に誘いかけた。雷横も大切な知事の息子を失っては、もう梁山泊に行くしかないと朱仝を説得した。だが、朱仝は李逵を殺さねば怨みが晴れず、梁山泊には行けないと言うと、奥で会話を聞いていた李逵は怒って飛び出てきた。


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