物語 第四十五回

淫女と坊主


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 石秀が楊雄のところに住み、開業した肉屋は二ヶ月もたたないうちに繁盛し商売も軌道にのった。ある日、藩巧雲の前の夫である王押司の二周忌がきた。楊雄は宿直の為もてなしができず、舅も高齢であり夜遅くまては身体に悪いため、石秀は接待役を任される事になった。
 そして報恩寺から僧侶が楊家にやってきたが、その中に海闍黎の裴如海という若い僧侶がいた。楊雄の舅は門徒であったため、裴如海は義父と呼び、藩巧雲はからは義兄と呼ばれている。会ったとたん見つめ合う藩巧雲と裴如海の怪し気なしぐさに、二人の間に何かあると石秀はすぐに勘付き、いらだった。

 しばらくして裴如海が大勢の僧侶を従えて祭壇へ来た。石秀と藩巧雲は一同を出迎え、王押司の供養の準備も整うと、張り切って経を唱える裴如海。藩巧雲を前にし、僧侶達は日頃おさえている欲情をおさえきれず、藩巧雲に見とれてしまい、経を読むどころろではなかった。
 朝方まで続いた供養も無事終え、起きてきた舅と藩巧雲は裴如海と他の僧侶達に礼をのべ、見送った。石秀は腹が痛いと言い、寝たふりをしていたが、一部始終を見届けていた。僧侶達が立ち去った後、腹の立つのを抑え仕事に戻った。
 翌日、欲情をたぎらせた裴如海は藩巧雲の母親の願解きを行っては、と理由をつけてやってきた。藩巧雲も裴如海の意を悟り、昨日の供養の礼を述べ、願解きへ行くようにと父親をうまく丸め込んだ。
 藩巧雲は裴如海を見送ると、もう頭の中は男の事でいっぱいである。願解きの事を楊雄には父親から言うように頼と、帰宅した楊雄は何も気付かないまま、願解きに行かせる事を承諾した。
 翌日、藩巧雲親娘は準備を整え、家の使用人の迎児をつれて報恩寺へ出かけていった。出迎えた裴如海は寺に案内し、願解きもほどほどに終わらせ、一室に案内し茶を出してもてなした。

 裴如海の目的は女で、邪魔なのは父親と迎児である。茶を出し料理を出し酒を出し、ついすすめられるがままに酒を飲んだ藩巧雲の父親は酔いつぶれてしまった。
 藩巧雲は迎児に父親を休ませるようにと、別の部屋で横にならせ面倒を見るようにといいつけ、自分は裴如海の言うままに、二階の裴如海の部屋へと行った。狙い通り二人きりになったところで、裴如海は藩巧雲に思いを打ち明けた。藩巧雲も心の中は裴如海の事でいっぱいだったが、わざとじらして気を引くと、二人はさらに欲情をみなぎらせた。
 そして、二人を邪魔をする者もなく思いを成し遂げるのであった。

 もはや互いを必要としている事が分かった二人。藩巧雲は留守がちな楊雄の目を盗んで密会する約束を整え、何事もなかったかのような顔で休んでいた父親を起こすと、裴如海に礼をし帰宅した。
 藩巧雲はさっそく迎児を買収し、裴如海は侍男の胡道人を味方につけた。迎児と胡道人は打ち合わせをし、裏門に香机が出してあるのを合図に裴如海を迎え入れる事になった。また、朝寝過ごさないように、裏門で夜明けとともに裏門で木魚を叩かせるよう胡道人に命じた。
 この日以来、楊雄の当直の夜は迎児が香机を裏門に出し、それを胡道人が見にいき裴如海に知らせる。香机があると、裴如海は人目をしのんで藩巧雲のところへ出かけて行くのであった。

 石秀は近所で毎朝、袋小路で木魚の音が聞こえる事を不審に思い、ある朝見ていると裏口から頭巾をかぶった一人の男が出て行き木魚の道人と去って行き、迎児が門を閉めるのを見た。石秀には男が裴如海だという事にすぐ気付き、密会をしている事を楊雄に知らせた。
 宿直帰りの楊雄をつかまえ、この事を細かく話すと、楊雄はカッとなりすぐにも藩巧雲に問いつめようとしたが冷静な石秀は止めた。まずは現場を押さえる事が大事だとして、何も気付かぬふりをして、楊雄は宿直の無い日にわざと宿直を装って家を出、夜明け前に帰宅し証拠をつかもうと石秀は策を練った。

 楊雄は残っている仕事を片付けるため役所に戻ったが、仕事のつき合いで酒を飲む事となり、つい飲み過ぎて酔っぱらって帰宅してしまった。横になると、ついむしゃくしゃした気持ちが込み上げ、つい石秀に口止めされている事も忘れ、寝言混じりで藩巧雲に密会しているだろうと漏らしてしまった。
 きっと石秀に勘付かれたのだと知り焦ったが、藩巧雲はこれを逆手にとり、石秀が留守をいいことに悪さするのだと、翌朝楊雄に泣きながら話すと、楊雄はすっかり本気にしてしまった。怒った楊雄は肉屋の仕事道具を叩き壊し、舅にだけ店をたたむと言い出勤した。

 石秀は勘の鋭い男だったので、すぐに楊雄が口をすべらし藩巧雲に丸め込まれたのだと悟り、すぐに身をひいた。舅も楊雄の気性を知っていて、ひき止める事はしなかった。
 だが石秀はこのままでは楊雄の身に危険が及ぶかもしれないと感じ、証拠を掴んで楊雄の目を覚まさせようと考えた。楊雄の宿直の日を調べると、まだ薄暗い中、こっそりと楊家の裏口ではっていた。すると道人がやってきて木魚を叩きはじめたので、石秀はこっそり近付き道人を脅し、すべてを白状させると身ぐるみを剥いで殺した。
 道人の服を着込んで木魚を叩いていると、案の定裴如海が出てきた。近付いてきて石秀に気付いた時には遅く、服を剥ぎ取り殺された。


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