
黄信は秦明に説得され、宋江達は清風寨に入った。花栄は妻と妹の無事を知ると、屋敷の金品と家財を車に積み込み、家族とともに山寨へ引き上げた。
燕順と王英は劉高の屋敷を襲い、金品を全て奪い去った。一族はこ処刑されたが、劉高の妻だけは王英が山寨へと連れ帰った。しかし、生かしておくとまた災いの種になるだろうと、燕順の手によって処刑された。
秦明と黄信二人の新たな仲間入りの祝の席で、宋江と花栄は相談の上、花栄の妹を秦明に娶らせる事となり、盛大な宴となった。
そのころ慕容から上申を受けた開封府では、清風山討伐の為の官軍が動き出した。この情報を受け、宋江達は対策を練ったが、大部隊相手にこの山寨では持ちこたえられない。宋江は梁山泊の行きを提案した。
話しがまとまると、山寨を焼き荷物をまとめ、第一隊は宋江と花栄、二隊は秦明と黄信、三隊は燕順・王英・鄭天寿。山賊の移動と疑われないよう梁山泊討伐軍に扮装した。
しばらくして第一隊が怪しげな山にさしかかった時、激しい銅鑼の音が響いた。
左右同じ形の山から、それぞれ百ほど人馬が一斉に駆け降り、中間の平野で対峙した。左手からは赤い戦縫をまとった若武者を先頭に赤い頭巾の山賊、右手からは白い戦縫をまとった若武者を先頭に白い頭巾をかぶった山賊である。二人の若武者は手には方天画戟を持ち、一騎討ちを始めた。ここは対影山という山賊の住みかであった。
この一騎討ちには目をみはるものがあった。ともに方天画戟の使い手とみえる。この二人の武芸の腕にしばらく見とれる宋江と花栄であった。
激しい戦いの最中、二本の方天画戟の房が絡み合い取れなくなったのを見た花栄、一本の矢を取り弓を引きしぽると方天画戟の絡み合った房を狙い通り射た。みごと花栄の射た矢で、二本の方天画戟は離れた。
あっと驚く歓声とともに戦は中断され、二人は宋江と花栄の元に駆け寄りってきた。この二人、赤い戦縫をまとうは呂方、白い戦縫をまとうは郭盛という。花栄が名を名乗り、隣りの宋江の名を聞くと、馬から飛び降りて平伏する。面識はないものの、日頃から宋江を慕っていた二人であった。
聞けば戦いの理由は縄張り争いだという。宋江は戦いの仲裁をして梁山泊行きを進めた。二人は喜んで隊列に加わった。
大人数になり、梁山泊側の混乱を予測した宋江は、まず燕順と数名の手下を連れ、梁山泊へと一足先に向かう事にした。晁蓋に対面して受け入れの段取りを整えるてもらう手筈を整えておく為である。
秦明・花栄が第一隊となり手下を指揮し、王英と鄭天寿が第二隊、呂方と郭盛は山寨を焼き払い始末をつけると、手下のうち同行を希望する者だけを連れて、武具・金品等を車に積み込み、第三隊として列に加わった。
梁山泊に近づき街道沿いの酒店で休息をとる宋江と燕順、そこで偶然にも、宋清から手紙を預かっている男に出会う。
男の名は石勇、宋国で頭を下げるのはただ二人、宋江と柴進だけだと豪語する。宋家で厄介になり、手紙を預かって孔家に行くところだった。
宋江は手紙を読んで驚いた。内容は、父が死んだから戻ってきてくれと書かれていた。実家へ戻る事を燕順に告げる。燕順と石勇は何度も止めたのだが親孝行の宋江の意思は変わらなかった。
宋江は石勇にも梁山泊入りを進め、晁蓋宛に秦明、花栄達の名を書いた手紙を書き、燕順に渡すと急いで酒店を飛び出していった。
燕順と石勇は酒屋で秦明・花栄達たちと合流、燕順は石勇と出会いから宋大公の弔いの為実家へと駆け戻った事を伝えた。
相談の末、宋江抜きで梁山泊を目指す秦明達。しばらく進み、湖沿いの道に出たとたん、銅鑼の音を合図に湖上には数え切れぬほどの船が漕ぎ出てきた。小船ながら、見事に統率された船団に驚かされた。
船団を率いるは林冲と劉唐であった。梁山泊では官軍が討伐にきたものと察し、林冲と劉唐が出陣し指揮をとっていた。
すぐに馬上から降りた花栄は、宋江からの手紙を所持していると伝えると、林冲は朱貴の酒店で拝見しようと、船を向かわせた。指示された通りに九人の好漢は朱貴の酒店に向かい手紙を渡す。朱貴は出迎えて酒食の用意をしてもてなした。
しばらくして呉用の乗った渡し船がやってきた。
金沙灘へ上陸した九人を、晁蓋は頭目を引き連れて待っていた。多くの好漢の仲間入りに対し歓迎の挨拶で出迎えた。
それぞれ聚義庁へと移動し、盛大な歓迎の宴が用意される。新旧の頭目がそれぞれ左右に別れて席につき、最高の盛り上がりをみせ、好漢の噂や武勇談は尽きなかった。
だが話しが花栄の弓の事になると晁蓋・林冲などはおおげさな話しだ信用せず聞き流していた。それだけ武芸の質が高いと言える。残念なのは宋江がこの場にいない事だった。
翌日九人の好漢は山寨周辺を案内され、天然の要塞や官軍に対する備えを見て回った。途中、ふと頭上を雁の群れが飛んでいるのを見た花栄は、晁蓋達に弓の腕前を披露しようと、弓を借り一本の矢を選び、予告通り雁の中から三番目、それも頭を見事射抜いてみせた。これには梁山泊の人々誰一人として花栄の弓に驚かない者はなく、神臂将軍と誉めたたえた。
数日して、新たに仲間に加わった好漢達の職務が決まり、家族達の家屋が準備された。
そのころ宋家村へ帰った宋江だが、村人から宋江の父は元気で暮らしていると聞かされる。半信半疑で家に戻り門を叩くと父親が元気に出迎えた。宋清に手紙の事を問いただすと、恩赦にて罪が減ぜられる事、父がひと目会いたいがため、嘘の手紙を書いた事を告げた。
父は涙を流して語った。万が一賊の仲間にでも引き込まれてはいないかと心配する日々を送っていたと。
宋江は落草する自分を恥じ、父の思いに心を打たれ涙を流した。
