物語 第三十回

蒋忠の逆襲


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 武松は拳を振りあげ蒋忠に打ちかかる。命ごいをする蒋忠に向かって、三つの条件をだした武松。初めて目の前の相手が虎退治で名を馳せた武松と知った蒋忠、施恩が大勢の人を引き連れやってくると、家財を全て施恩の元に返す事、施恩に詫びをいれる事、孟州から出て行き戻ってこない事を約束し、店を片付け荷物をまとめ、大慌てで手下達とともに逃げて行った。
 その日は快活林を取り戻した事で、武松は大勢の人達に酒をすすめられ遅くまで宴が続いた。

 施恩の商才にて、その後数日間で快活林は以前にも増して繁盛した。武松は施恩の申し分のない待遇に甘え、酒を楽みながら気楽な生活を送る。そんなある日、施恩の父の上司である兵馬都監の張蒙方から武松を招待するとの事で迎えがやってきた。施恩にとって父の上司であり断わる理由もなく、武松も命令とあれば行かないわけにはいかないと、その日のうちに張蒙方の屋敷へと出向いた。
 虎退治のの武勇伝を聞き、惚れ込んだと言う張蒙方は武松を屋敷に仕えされる事とし、施恩の元へ荷物を取りにやると、側に仕えさせ、日毎に目をかける様になり、何事にも褒美をとらせる様にした。

 すっかり気を許した武松。ある中秋の宴に呼ばれた。身内だけの宴だったので、最初は武松も遠慮したが、張蒙方たっての誘いであったため、何盃かの酒を飲んだ。
 何杯か酒がまわると、張蒙方は歌唄いの玉蘭という美しい女を呼び出し、歌をうたわせた。張蒙方は武松に向かって、いずれはこの玉蘭と夫婦にさせてやろうと約束した。武松は囚人の身であると、固く事態した。
 張蒙方と玉蘭からすすめられるままに何杯か酒を飲んだ武松、これ以上酔って無礼があってはと席を立ち、自分の部屋へと戻った。

 武松は部屋に戻ったが、まだ寝つけないので庭に出て棒を使って汗を流した。すると屋敷に賊が入ったとの声が飛ぶ。日頃世話になっている礼とばかりに棒を持ち、声の方へと走っていった。
 慌てて駆け付けた武松だが、そこには賊の姿などなく、玉蘭が賊の逃げた方を武松に伝えた。裏手に走って行った武松は、不意に屋敷の使用人数人に取りえさえられ縄を打たれた。
 暗闇のせいで賊と間違えたのだろうと思いながら、武松は抵抗もせず縛らせたが、張蒙方の前に引きずられていくと本当の賊のように取り扱われた。

 張蒙方は血相を変え、日頃目をかけていた恩を忘れ盗みを働くとは、と武松に大声でどなった。武松は賊を捕らえに行き、間違えて捕らえられたと言うが、張蒙方は聞き入れる事なく、武松の部屋を捜索させた。
 すると次々と盗品が出てきた。武松には思い当たるふしもないのだが、言い訳無用と翌朝役所へ連れて行かれた。
 こればすべて張蒙方が仕組んだ罠であった。張団練との義兄弟をいいことに、蒋忠の恨みをはらし快活林の実入りを手中におさめようとの魂胆であった。

 武松が張蒙方の屋敷で盗みを働き捕らえられたと知った施恩。これは全て張団練と蒋忠が裏でからんでいると気付き、父と相談する。武松は盗みをはたらいただけで死罪になる事はない。だが牢獄で命を狙われる恐れがあると、いそいで金をあつめて牢番や孔目に配り、早く武松を軽い罪にし、張蒙方の権力から遠ざける様に働きかけた。
 牢番と知り合いだった施恩は金をつかい武松に面会し、張蒙方悪巧みを話した。金を使って軽い罪になる様に働きかけているので早まった事はしないように告げた。

 施恩は三度武松の元を訪れ、惜し気もなく金を配った。だが面会している事が張団練に知れてしまい、見張りが厳しくなり面会ができなくなった。施恩はしかたなく牢番の元へ毎晩通い、武松の様子を尋ねた。
 張団練から話しを聞いた張蒙方は知府に対して、武松に早く死刑判決をだすよう催促したが、張蒙方達の悪巧みと知ったうえ、担当の孔目が正直で義を重んじる人物であったため、武松は流罪への運びとなった。
 背に棒打ちされ、恩州流罪の判決がでた武松。首枷をはめられいざ出発となった際、包帯をした施恩が現れた。またも蒋忠に快活林の縄張りを奪われた事を聞くと、込み上げてくる怒りでいっぱいの武松だった。

 施恩は護送役人に酒屋にはいるようにすすめたが、役人達は断ったうえ金もうけとらない。おそらく張団練の息がかかっているのだろうと心配しつつ、差し入れの食事と酒を武松の首枷にかけ、武松に道中気をつける様にささやいた。
 施恩や人々に見送られ孟州を後にした武松達。施恩の差し入れを食べながらしばらく歩くと飛雲浦という橋にやってきた。途中、怪しげな二人組が朴刀をかかえ、後ろからつけてくるに気付いた武松だが、気付かないふりで橋の上にさしかかった時、小便させろと言い、わざと隙をみせた。すると思った通り朴刀を持った二人が武松に襲い掛かってきた。

 首枷しているものの、たかだが四人の小者は武松の敵ではない。近寄ってきたところをのひと蹴り、そしてもうひとり驚いて逃げるところを、またもひと蹴りで川へ落とした。武松は力を込めて枷を二つに割ると、逃げ去る二人の役人を拾った朴刀で突き殺した。
 川に蹴り落とした一人を殺し、もう一人から蒋忠の弟子だと聞きだすと、蒋忠や張蒙方達の居所を問い詰める。張団練と蒋忠は張蒙方の屋敷で武松暗殺の報告を待っていると言う。
 四人の息の根を止め死体は川へと投げ棄てた。武松はましな朴刀を拾うと、まっすぐ張蒙方の屋敷へと駆けつけた。


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