
朱武達との酒宴の最中、外が騒がしいのに気付き史進が塀に登って外を見ると、武器を持った捕手達が無数の松明をかかげ、盗賊を出せと言い屋敷を包囲していた。どうしてバレたのかと不審に思い、史進は何事かとたずね、話しをごまかすのだが、都頭のそばに李吉がいて、森で手紙拾って役所に届けたのだと聞かされる。返書は無いと言った王四に真実を確かめると、まず王四を殺し使用人達には家財を分け持たせ屋敷に火をかけた。
朱武達は史進に間違いがあってはと自首しようとしたが、史進が承諾するはずはなく、刀を取ると門を開き自ら先陣きって役人に向かって道を切り開き、まっさきに李吉を見つけだし斬り殺した。
朱武・楊春が続き下男達を守り、陳達が殿となった。ひとまず少華山へと向かう事となった。代々つとめていた里正の屋敷は史進の手によって焼け落ちた。住む家をなくした史進と使用人達はしばらくは少華山にとどまり、ほとぼりが冷めるのを待つ事にし、行く当てのあるものには金を渡して去らせた。
朱武は史進に首領の座をすすめたが、史進は承諾せず師匠の王進を探したいといい、下山した。朱武達三人が見送る中、ひとり史進は師匠を探すだびにでた。
旅人姿に身をつつみ、延安府をめざす史進が少華山を出て幾日かしてたどり着いたのは渭州。史進は酒屋に入り主人に王進についてたずねた。だが王という役人は数人いて店の主人には判らなかった。
主人は店の中にいる堤轄に聞いてみてはと言うと、史進は堤轄に聞いてみた。違いに名を名乗りあう、ひげもじゃ巨漢の提轄の名は魯達といい、史進の名を噂に聞いていたので、すぐに意気投合し、その場で義兄弟となったが、王進はやはり延安府にいると聞かされる。
魯達は店を変えて飲みなおそうと外に出ると、史進が街角で膏薬売りをしている李忠に気付いた。李忠は以前史家村に滞在し、史進に棒術を指導していた事があった。魯達は強引に李忠も誘い、三人は酒屋に入った。
魯達・史進・李忠の三人は酒店の二階でた卓を囲んで飲んでいた。すると、どこからか女の泣き声が聞こえてきた。魯達はその泣き声に我慢できず、店の者を呼びどなりつけた。
泣き声は歌唄いの父娘であり、なにやら訳ありらしく、魯達はその父娘を呼びよせ訳を訪ねた。娘の名は金翠蓮と言い、開封から渭州に流れついたとき、親切そうに近付いた肉屋の鄭の妾にされ、空の証文をつかまされると追い出された。歌を唄って稼ぐが、金の大半を借金の返済として削り取られ、苦しい生活を強いられて泣いていたのだった。
父親から詳しい話しを聞いた魯達は、近頃何かと評判の悪い鄭にはげしい怒りを覚え、金父娘にかわって復習する事を約束した。
短気な魯達はすぐにも鄭の所に行こうとしたが史進達が止め、まずは父娘を渭州から逃がしてやろうと、魯達と史進は路銀を渡して、ひきとらせた。李忠も金を出したが、少なすぎたので魯達からつっ返された。
魯達は史進と李忠と別れ、宿に帰り酔いつぶれて寝たが一晩中、頭の中は鄭への怒りだった。
翌朝早く金父娘は宿賃を払うと一台の荷車を借り荷物を積んだ。鄭の手下に見張られていたが、魯達がやってきて睨みをきかせると無事出発でき、はなおも魯達二時間ほど睨みをきかせ、遠くまで行ったのを見計らい、鄭の肉屋へと足を向けた。
鄭の営む肉屋は状元橋のたもとにあり、関西きっての顔役ともなれば、店の羽振りも良い。魯達は中へ入り、椅子に腰掛けた。
魯達に気付いた鄭はいつもの様に愛想をふり、機嫌を伺うように話しかけた。魯達は鄭に向かって赤肉を細切れにしろ、次ぎは脂身を細切れにしろ、軟骨を細切れにしろと鄭をからかった。
怒った鄭は片手に肉切り包丁を握り魯達に向かって行ったが、まったく相手にならず、魯達の拳をまともに受け、鄭の身体は店先に転がり飛ばされた。
肉屋の外はすぐに見物人の山となり二人を囲んだが、魯堤轄と知って止めにはいる者はない。なおも魯達は鄭の顔めがけて二発目、三発目の拳を打ち、鄭の目玉は飛び出、血を吐き伸びてしまった。
魯達は軽く痛めつける程度に殴ったつもりだが、金父娘の苦しみを思うとつい力が入っしまった。ぴくりとも動かないので近付いてみると鄭は死んでいた。提轄でありながら殺人を犯しては、もうこの地にはいられないと考え、魯達は人ごみをかき分け姿をくらました。
主人が殺されたとして鄭の家族から訴えが出てた。捕手たちが魯達を捕らえるため、宿に向かったが、すでに荷物が片付けられ逃亡していた後だった。
数日して魯達には懸賞金がかけられ、人相書き入りの手配書が各地に張り出された。隣の代州にも手配書が貼られ、人々は眺めていた。
その人々の中に、必死で渭州から逃亡した魯達がいた。字の読めない魯達は自分の手配書とは知らず、どうどうと眺めていたところを、後ろから呼びかける男がいた。
