物語 第二十八回

金眼彪施恩


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 張青は武松が孟州流刑となった事を聞いた張青は、牢城で苦役を強制されられるよりは、いっその事二人の端公をここで殺し、魯智深と楊志のいる二竜山へ行って山賊になって自由な生活を求めてはどうかとすすめる。
 だが武松は街の人々を裏切り、何ひとつ辛くあたらなかった端公を罪なく殺してしまう訳にはいかないと、きっぱり断わった。二人の役人は醒まし薬を飲まされ目覚めた。
 張青は以前孫二娘が痺れ薬を飲まして殺してしまった行者がいた事を話し、その持ち物の中に夜になるとううなりをあげるという刀を見せた。

 武松と張青、ともに義侠の人であったので意気統合し、江湖の好漢達の話しや武芸の話しをし、義兄弟の杯を交わした。年上の張青を兄、武松を弟とした。
 武松と端公は三日間張青のところで過ごしたが期限に遅れてはと、これ以上世話になる訳にはいかず、牢城へと立つ事にした。
 ここ孟州の牢城は安平寨といい多くの囚人が服役している。武松の引き渡しの手続きを済ませた端公の二人は武松に別れを告げ帰っていくと、武松は独房に入れられた。

 しばらくして管営の前に呼び出された武松。お決まりの入獄前の殺意棒だが、親切な囚人達から金を持っているなら、管営や差撥に金を渡すよう言われてはいたが、武松には金を渡す気などなく、さあ殴ってみろと覚悟を決めていた。それを察知した管営は金は取れないとみて、棒打ちを始めようとした。
 その時、頭と腕に包帯を巻いたひとりの若者が管営に耳打ちし、それにより武松の棒打ちが中止となった。武松には包帯の若者とは面識もなく、思い当たるふしもない。
 そのまま独房に入れられた武松、どうした事か食事や酒をふるまわれ入浴まで用意された。処刑前の最期の食事かと思いつつ、その夜は休んだ。

 翌日も食事と酒が用意されて、呼び出される様子はない。しばらくして綺麗な部屋へと移され、また食事と酒が武松に用意された。不審に思いつつも食事をとり、外を眺めるてみると多くの囚人が炎天下の作業を行っている。流石に薄気味悪くなり、ついに食事を運ぶ係に問い詰めた。
 武松の待遇を良くしてくれたのはここ安平寨の管営の息子、あの包帯をしていた若者が金眼彪の施恩だという事だけ分かった。どうしても訳を聞きたい武松は係りの者に施恩を呼んでほしいと言うと、しばらくして今だに包帯の取れない施恩が現れた。武松と施恩、互いに挨拶を交わし名乗り合うと、武松はこの訳をきいた。

 武松が訳を聞いても、なかなか本心を語ろうとしない施恩。ただ長旅の疲れを心配し、武松の体力が回復するのを気長に待ち、それから力になってもらいたいと、ただそれだけを言う。
  短気な武松は外に置いてある重さ四百斤はあろうかという円石を見つけると、これを軽々と持ち上げ、上へと放り投げ、また元の位置へと置いて体調の良さをみせた。武松は顔色ひとつ変えず、まったく息も弾んでいない。
 これには施恩も驚き、それを見ていた囚人達も神わざだと拍手喝采。武松の気力十分と知った施恩は全てを武松に打ち明けた。


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