物語 第二十一回

殺人者宋江


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 宋江は劉唐が無事に街から出ていくのを見送ると、いつものように役所の寝所へと戻ろうとしたとき、運悪く閻婆につかまった。宋江はいつも言い訳を言って逃げていたが、今夜ばかりはしつこく迫る閻婆の迫力に負け、閻婆惜の元へと足を運んだ。
 しかし、閻婆惜の気持ちはすでに張文遠に傾いている。宋江が訪問してきたからといって相手にする素振りも見せない。だが、閻婆は生活する為には金づるである宋江を手放す訳にはいかないと思い、食事の準備をして、すでに白けた二人へと無理矢理酒を進める。しかたなく閻婆の言う様に従う宋江と閻婆惜だが、言葉も交さずただ酒を飲んだ。

 次第に居づらくなった宋江、閻婆のいない隙を狙って逃げだそうとするも、そこはぬかりない閻婆、外からは鍵を掛ける。突如、宋江を尋ねてきた唐牛児に目配せをし、口実を作るも芝居を見破れ、追い帰す始末。
 これは逃げ出せぬと観念し、とりあえず今夜一晩は閻婆惜と一夜を供にする事にした。食事を終え、ふてくされるかの様に寝床に入った閻婆惜、一言も口を開かず、ただ壁の方を向いて横になった。ほどなく、宋江も閻婆惜とは頭足逆にして寝床へともぐり込んだ。
 何時かたったが、苛立ちが抑えきれないため寝付けずにいた宋江、しかも足もとでクスクスと閻婆惜の笑い声を感じると、ついに我慢しきれず起き上がり外へと飛び出した。

 とりあえず飛び出した宋江だが、毎朝役所前に薬茶を商売する老人に声をかけられ、世間話しなどしていると、書類袋を閻婆惜の寝台に忘れた事に気付いた。中には昼間、劉唐から受け取った晁蓋の手紙と金が入っている。あの手紙を読まれては一大事と慌てて閻婆惜の元へ駆け戻った。
 宋江が出ていった後、閻婆惜は起き上がった。すると、寝台に忘れていったら書類袋に目が行った、どうせ宋江の忘れ物だ、いづれ張文遠にでもあげよう、などと思いつつふと中を覗くと、ずっしりとした重さを感じた。その中には、金十両と一通の手紙、その手紙には梁山泊首領晁蓋の名があった。字の読める閻婆惜はその内容を見て驚きと嬉しさを感じた。
 そこへ慌てて宋江が駆け戻って来て、閻婆惜に書類袋の行方を尋ねた。

 手紙の内容を理解できた閻婆惜は弱み握った為、強気に出た。まず家具一切自分の物とする事、妾として手をきり誰の元へ嫁いでも文句は言わない事、梁山泊から届けられた金百両を渡す事。
 宋江は前二つの条件は飲む事を約束するが、しかし金百両は十両しか受け取っていない為、渡す事はでない。期限をきって支払うからと説得するも、そんな事を聞く閻婆惜ではなかった。
 それならば、と閻婆惜は役所へでて白黒つけようと言う。ついには宋江も力づくで書類袋を奪い取ろうとした。そのとき、二人の前に袋の中に入れていた短刀が落ち、とっさに宋江は短刀を握った。とたん閻婆惜は人殺しと大声を上げる。その声に逆上した宋江、ついカッなり、宋江は閻婆惜を刺し殺してしまった。

 すぐに書類袋から晁蓋の手紙を燃やす。そこえ駆けつけた閻婆に事情を説明し、あとの事は全て面倒を見るからと説得し、うまく死体を片付ける様に計らった。
 宋江の言うままに行動する閻婆だが、これには考えがあり逃げ出されてはまずいと、棺桶を用意するふりをして役所の前に来たとたん、宋江の足を抑えつけて、人殺しと大声で叫んだ。役所の前だけあって、すぐに役人が駆けつけたが、相手が宋江だったので、だれも閻婆の言う事をまに受けない。
 そこへ偶然にも役所の前を通った唐牛児、宋江が困っているのを見、また昨夜の閻婆への恨みも込み上げ、閻婆を宋江から解き放し逃がしてやったのだ。だが、閻婆はしつこく人殺しと叫ぶので、役人は相手が唐牛児となったのを見て取り押さえる事となった。


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