
呉用の推薦する好漢とは梁山泊近くで漁を営んでいる石碣村に住む阮三兄弟。義に厚く腕っ節も強いと、晁蓋の耳にも届いている。この計画には願ってもない粒ぞろいの三兄弟、もとより晁蓋も劉唐も異存はない。
かくして呉用は阮三兄弟を仲間に引き入れる為、石碣村に到着した呉用は長男の小二の家の門を叩いた。すぐに顔を出したの立地太歳と呼ばれる阮小二であった。
対面した二人は懐かしさ喜びあった。呉用は相談事があるので、まずは酒でも交しながらと小二を連れ出し、小船を漕ぎだし酒屋へ向かった。
途中、一艘の小船がそばまで近寄ってきてた。末弟の小七、活閻羅と異名をとる好漢あった。博打に負け帰る途中の小七は、呉用と酒屋に行く途中だと聞くと喜び、二艘の小船は湖に進みだした。
もともとこの地にて漁師として営んできた兄弟であったが、最近は梁山泊に盗賊がはびこる様になり、漁に出れずにいる。酒や博打の好きな兄弟は漁などほっぽりだして賭場へ足を運ぶ事が多くなった。次男の小五もそのひとりだった。
小五は今日も博打に負け、母親の簪を持ち出して、また博場へ行く途中だった。短命二郎という何とも物騒な綽名をもつ。小五も呉用の姿を見て喜んで船に飛び乗り、四人は酒屋に入った。
呉用は、まず阮兄弟達の本心を聞き出す事にした。ある長者の祝に大きい金鯉を用意してほしい、と兄弟達に話し切り出し、遠回しに梁山泊の盗賊へと話しをふってみた。三人は、最近梁山泊の盗賊に脅かされ漁もまともにできず、大きい金鯉は梁山泊近くにしかいないので、手に入れようがない。官軍は盗賊を怖がり見てみぬふりで、農民や漁師など弱い立場の人間は重税に苦しみ、梁山泊に身を落とす者も増えていると言う。
酒も入り次第に胸の中が熱くなる三兄弟。呉用と世間の好漢や威張る役人らの話しをしていくうちに、はや金鯉の事など忘れ去り、今の自分を高く買ってくれる大物人物を求めている事を語りだした。
梁山泊の王倫は強い嫉妬心を持ち、仲間入りはたやすくはない事を知っているし、そもそも王倫の下につく気もない。阮三兄弟の心は呉用の思った通りだった。
熱く語る阮兄弟を一度落ち着けて、呉用は静かに語り始めた。ここにきた本当の目的は金鯉ではなく、東渓村の晁蓋が悪人を退治する為に一旗あげようと、阮兄弟の力を借りるために来たのだと話し始める。
阮三兄弟は義を重んじる晁蓋の名を慕っていたので、声がかかればこの命をあずける覚悟であった。期待していた事が今にも起ころうかと思う小七などは夢ではないかと疑い、小五などはいてもたってもいられない様子である。
もとより阮三兄弟は異存なく、晁蓋の為に命をあずける事を誓った。
生辰綱強奪に協力を決意した阮三兄弟は呉用と東渓村へ向かった。知らせを受けていた晁蓋と劉唐は出迎えて喜んだ。呉用は晁蓋と劉唐に阮兄弟を紹介し屋敷で歓迎の宴が行われた。
翌日、屋敷の奥の間では、紙銭を燃やし血判状に一人ずつ晁蓋を筆頭に名前を連ね、誓いの儀式を行うところだった。その時、なにやら外が慌ただしい様子。気になっていた所へ屋敷の下男がひかえながら戸を叩いた。この大事に何様かと晁蓋が尋ねると、下男は一人の怪しげな道士が門前に立ち晁蓋に合わせろと大声をたてるありさま。布施などは受け取らず、若い者で追い返そうとすると手向かいをしてくるのだと言う。
家の者では手に負えないとみて、晁蓋が正門へと向かうと、門の外には一人の道士が立っており、それを遠巻きに囲んでただ眺めているだけの下男がいて、なかには傷を負った者までいる。
驚いた晁蓋はすぐ道士の前に向かった。見るに鋭く冷ややかな眼光を時々閉ざし、静かに直立。身なりは白衣で包み、古銅剣を背に携え扇子で風を起こしている。
晁蓋が名乗ると、道士は慌てて身を低くし騒ぎに対して詫びた。この道士は、薊州の生まれで、名を公孫勝、道号を一清といい、嵐をよび雲に乗ることができるので入雲竜と呼ばれている。公孫勝の用件とは劉唐と同じく、北京からの生辰綱途中で奪ってやろうと晁蓋の名を慕い、北方からやってきたのだった。
