物語 第十一回

水郷梁山泊


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 林冲が目を覚ますと、連れ込まれたのは柴進の屋敷だった。だが、林冲の手配書が各地に貼り出され、捜索が行われていた。柴進は林冲をかくまう気でいたが、どうしても出ていくと言うので梁山泊へ仲間入りしてはと訪ねると、林冲は盗賊に身を落とす事を決断を下した。
 林冲は梁山泊の王倫への紹介状を手にし、柴進と供に混ざって狩猟の一行として滄州を密かに立ち梁山泊を目指した。

 滄州を出てひと月、梁山泊の近くまできた林冲は一軒の酒屋に足を止めた。辺りには葦の生い茂った水辺が広がる。梁山泊は自然の要害を利用し周囲は八百里といわれる。林冲は酒屋の主人に渡し船を依頼したが、船はないと言われ湖を渡るすべがみつからない。
 あてが外れた林冲は、つい酒を飲み過ぎ、酔って嘆きながら壁に詩を書いた。その詩を見て、酒屋の主人が声をかけてきた。王倫を頼って沂州から流れてきた旱地忽律朱貴といい、見張り役を勤める頭目の一人であった。

 梁山泊の仲間入りする為にはまず朱貴の許しが必要だった。林冲はこれまでの出来事を話し柴進の手紙を渡すと、朱貴は雪の湖面へと合図の鏑矢を放った。
 首領王倫と宋万はかつて流浪時代に柴進の世話になった恩があった。朱貴は手厚く林冲をもてなし、二人は山寨への渡し船に乗った。
 葦の生い茂る水路を渡り、金沙灘から上陸する。見渡す限り天然の要塞に驚きながら林冲は案内され山寨へ向かった。

 連絡を受け出迎えた王倫、腹心の宋万・杜遷と対面する。林冲は柴進からの手紙を王倫に渡した。そして林冲のための祝宴が開かれる事となった。仲間として受け入れられたと安心した林冲だが、王倫には林冲に対する嫉妬心が強く宿っていた。
王倫は器量が狭く自分よりも有能な人物を避ける器の小さな人物で、学問は一通りの知識はあるものの、武芸の腕は中途半端。いつも梁山泊首領の座を奪われまいと、有能な好漢たちの入山を退けてきた。

 王倫は林冲に対してわずかな路銀を用意し、食傷不足や山寨が狭いなどと、あらぬ理由をつけて梁山泊から追い返そうと話し出した。
 滄州で殺人を犯して行くあをなくし、梁山泊への仲間入りも追い返されるはめになるとは、不運を嘆く林冲だったが、朱貴は一人くらい仲間にいれても差し支えないと言い、また、以前世話になった柴進の顔に泥をぬる事になると言う。宋万と杜遷も、もし柴進に問われては申し訳できないと王倫を説得した。

 三人からの反論を聞き、こうなっては王倫も三人からの意見を退ける事は出来ず、投名状を三日以内に出す事を条件に、林冲の仲間入りを認める事とした。王倫の言う投名状とは、下山し旅人を一人殺し、その首を仲間入りの証明とするものであった。
 早速、林冲は手下ひとりと湖を渡り街道で旅人が通るのを待った。しかし、一日目、一人の旅人も現れなかった。二日目も団体の旅人が通っただけで、狙える様な旅人はいなかった。毎日王倫は林冲の元を訪れ、投名状はできたかと冷やかすのだった。

 三日目、別の街道で身を潜めていると、ひとりの旅人がやってきた。林冲は朴刀をかまえ、旅人の前に立ちはだかると、旅人は驚いて荷物を放り投げ逃げ出していった。林冲はとり逃がした事を悔しがったが、今奪った荷物が投名状になると言うので手下に持ち帰らせようとしたその時、ひとりの男が大声をあげながら駆け寄ってきた。
 男は荷物の持ち主らしく、怒鳴りながら朴刀を振りかざし、林冲に襲いかかってきた。獲物が向こうからやって来たと喜び、林冲は朴刀を構え身構えると、旅人の朴刀を受け止めた。


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